看護におけるタッチング ~タッチングはコミュニケーション~

前回のブログでは、タッチングの効果についてお話しました。タッチングには、リラックスを促したり不安や緊張をやわらげたりする効果があることがわかっています。

患者さんは治療や闘病に伴う不安や緊張など様々な辛さや痛みなどの身体的、精神的苦痛を抱えています。

看護師が患者の抑うつや不安に対処することは、結果として患者さんの状態を良くしていく力になります。その援助技術の一つとして、日常的に使えるのが触れるケアです。

触れるケアは、患者さんを励まし、支え、不安や孤独などの苦痛をやわらげる一助となります。

患者さんの辛さや痛みががほんの少し楽になることで、治療に意欲的になったり、生きる力を 取り戻すきっかけになったりします。

タッチングは言葉を超えたコミュニケーション

さらに今日、お伝えしたいことは、タッチングのコミュニケーション効果です。触れることは、言葉を使わないノンバーバルなコミュニケーションです。言葉がなくても「寄り添う気持ち」を伝えてくれます。看護師がケアを通して触れる手が、患者さんとの信頼関係を築くのに大きく寄与しているのです。

信頼関係を築くタッチング

私が緩和ケア病棟で患者さんにタッチをしていると「どうして、僕だけこんな目に逢わないといけないのか」とか本当は、最期は家に帰りたいんや」と内に秘めていた想いを吐露する場面が多くみられます。

これは心地いいタッチが患者さんに安心感をもたらし、信頼を築いて感情の表出を促したからではないかと考えます。

タッチングは寄り添うことを形にしてくれる

患者さんにやさしく丁寧に触れることで、大切にしている気持ちを手から伝えることができます。

例えば血圧を測る時に、ただ血圧を測ることだけに集中するのではなく、患者さんにやさしく触れることで、「私のことを気にかけてくれている」「心配してくれているな」と患者さんは感じます。

バイタルサイン測定や清拭の時に気持ちよくケアをすることで、心の通じ合うケアリングの時間に変わります。タッチングは、寄り添うことを形にした技術です。

タッチングは心地よさがカギとなる

患者さんに触れて信頼関係を築くためには、「心地よさ」が大切です。「気持ちがいいことをしてくれる人はいい人」という印象を持ってもらえるからです。逆に不快なことをする人は嫌な人だと思われてしまいます。

心地よく感じるためには患者さんに優しく、丁寧に触れていきます。と言っても、具体的にはどのように触れたらいいのでしょうか?

メディカル・タッチは、触れた時に患者さんが心地よいと感じる触れ方を編み出しました。それが「タッチングの5原則」です。

5原則については次回にお話しします。

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この記事を書いている人

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見谷 貴代

看護師/アイグレー合同会社副代表 アロマセラピストから看護師になり、緩和ケア病棟や高齢者施設で5,000人の患者にタッチングを実践。病院や高齢者施設、製薬会社、企業などで研修や講演を実施。大学でも非常勤講師として活躍している。